『ザ・ファブル』と言う大好きな漫画があります。
男女2名の若い殺し屋が主人公で、舞台は大阪。主人公は佐藤明。
ある日殺し屋組織『ザ・ファブル』のボスから1年間殺しの仕事をストップせよとの命を受けます。
そして組織の顧客の1つである大阪の暴力団「真黒組」の持つ家で1年間過ごせと言われます。
これだけ見れば物騒な導入部。
なのですが、作者の南勝久氏おなじみのゆるーーい作風と、
時折描かれる、伝説の殺し屋としての尋常でない身体能力や、裏社会のトラブルなど緊迫したシーンで構成される緩急が面白いのです。
こんな人にオススメ『ザ・ファブル』
◯ 裏社会ものが好きな人
裏社会もの(殺し屋、ヤクザなど)ジャンルが好きな人。裏社会の細かい描写を見てみたい人。等々。この辺はグロやディープな要素もほんの少しある感じです。
◯ ゆるい日常やコメディタッチが好きな人
ゆるいコメディが好きな人。関西弁の会話が好きな人。などは面白いと感じるでしょう。
でも注意したいのは、ゆるさと裏社会ものの緩急がはっきりしていると言う点。
でもこんな人にはお勧めしない
✖ 人が死ぬ話がNGな人
ごくたまに理不尽に死にます。あまりそこまでグロくもないのですが、この手の話が苦手なら避けましょう。
✖ 無双・チート系が好きな人
逆に無敵の人物が無双しまくる痛快な話を求める人にも向いてません。
主人公は強いですがそうそう派手なアクションがある訳でもなく。
✖ SF、ファンタジーものが好きな人
SF、ファンタジー、異世界ものなどが好きな人にも向きません。
めちゃくちゃリアリティにこだわって描かれているからです。
✖ 恋愛、ドラマ系が好きな人
その他恋愛ものやドラマ系などが好きな人にも向いてません。
そういった要素はほぼ無いからです。
『ザ・ファブル』面白かった見せ場
見せ場1:殺し屋の身体能力が異様に高いところ
『ザ・ファブル』の面白さの一つは、殺し屋たちの身体能力の高さです。
作風がリアリティを追求しているだけに、その非日常ぶりまで逆にリアルに感じられます。
「本当に人間突き詰めたらここまでいくのかも」と思わせる面白さに繋がっています。

『ザ・ファブル』第1巻。防犯カメラを一瞬で見つけて銃で正確に撃つ主人公・佐藤明。いくら何でも速すぎる。

『ザ・ファブル』2巻。追われて陸橋から飛び降り涼しい顔をする主人公・佐藤明。追手の反応は「ええ~~っ⁉どうやって──⁉」

『ザ・ファブル』6巻。敵を180度逆をよそ見しながら正確に撃つ主人公・佐藤明。人間かこれ。
他にもこんな見せ場がゴロゴロあるのが『ザ・ファブル』であります。
見せ場2:ゆるいコメディ
『ザ・ファブル』には、ゆるいコメディタッチのシーンが緩衝材よろしく挟まれる事が少なからずあります。
決して派手に笑わせる様な事もなく、大爆笑する様な訳でもない。
ただただゆるーくクスリと笑えるシーンがあるのです。
こういうのは大人になってから「いいな」と思える様になってきました。

『ザ・ファブル』8巻。ナンパしてきた男を逆に酔い潰れさせるもう一人の主人公・佐藤洋子。人を潰しておいてこの喜びようである。

『ザ・ファブル』13巻。こんなゆるゆるとした会話が挟まれるのも『ザ・ファブル』の魅力。
『ザ・ファブル』を無料で試し読みする方法
『ザ・ファブル』を無料で読むには次の様な方法があります。
- Kindleの無料キャンペーンで購入して読む
- コミックシーモアで読む
- コミックDAYSで読む
先にユーザー数が圧倒的に多そうなkindleから紹介します。
1:Kindleの無料キャンペーンで試し読みする方法
たまーに見かけるのですが、『ザ・ファブル』は1巻が無料になるキャンペーンがあります。
もしかしたら他の漫画の様に1巻~3巻まで無料と言った場合もあるかも知れません。通常は1巻kindle版の定価は540円です。
kindle無料キャンペーンは常にやっている訳ではないため偶然遭遇するしかありません。
週ごとに切り替わる事があるので、毎週月曜日か月初1日目にこのkindle版の1巻のページを覗いてみて下さい。
ちなみに私は過去2年で2度ほど遭遇した事があります。
最新刊の第15巻はこちら。
2.コミックDAYSで『ザ・ファブル』を試し読みする方法
ちなみに、コミックDAYSでは『ザ・ファブル番外編』も無料で3ヶ月以上前のものは閲覧可能です。
それより直近のものだと有料。
この番外編は『ザ・ファブル』のゆるゆるした雰囲気だけを余すところなく表しています。
本編の登場人物が説明なしに出てきます。特に本編の重要な伏線等にもなっていません。ですのでよほど『ザ・ファブル』の大大大ファンでなければ面白くはないと思います。笑
『ザ・ファブル』あらすじ・ネタバレ
注:ここから先、しばらくは強烈にネタバレかましております。
まだネタバレを見たくない方は、次の章の『ザ・ファブル 小ネタ』をご覧ください。
大阪編
序章。
殺し屋として休業、普通の暮らしをする事をボスから命じられ、兄役・佐藤明(主人公)と妹役・佐藤洋子として大阪の暴力団組織、真黒組の一軒家に入居。バイトやら何やらで街に溶け込もうとする。
凄腕の殺し屋として生きてきた佐藤明が、一般人とのコミュニケーションがうまく出来ず、そのギャップの面白さが見どころ。
小島編
15年前に一般人を殺した罪で服役していた小島が出所。
若頭・海老原剛士の弟分だが何かと真黒組のやり方と真逆の考え方を示したり、
海老原の言いつけをすぐに破ったり、同じ真黒組組員の砂川の関係者を殺害するなどで揉める。
結局砂川に殺害されかけた所を佐藤明が救出し、海老原の手によって死亡。
なおこの際に海老原はファブル組織のボス直々に「佐藤明を組みのトラブルに巻き込むな」と怒られる。
この章では初めてファブル組織以外の殺し屋も登場するが、佐藤明に全く歯が立たないなど、明の強さが際立つ。
同時に、真黒組やファブル組織の関係性、互いの考え方がよくわかる章。
山籠り編
佐藤明が定期的に行う修行としての山籠もりに、明にあこがれる黒塩がついてくる。
一般人と違う明の山に対する考え方や、熊に2度襲撃されながらも冷静に熊と対峙しようとする明の凄みなどが見どころ。
太平興信所編
表向きは興信所、実は裏稼業組織を設立した宇津帆(ウツボ)。かつて明に弟を殺害されており、因縁の佐藤明が偶然同じ太平市にいる事を知り、襲撃を企てる。宇津帆のパートナーの殺し屋の鈴木と明が対決すると言う話。
まずこの話で明るみに出たのは、実は佐藤明の妹役の佐藤洋子も殺し屋としてかなりの腕前と言う事。
この章の序盤で知りあいの殺し屋2人を軽々と殺害した鈴木と自宅で対峙し、女性とは思えない身のこなしであっさりと勝利、捕獲。
只の佐藤明のサポート役ではなく、立派ないち殺し屋だった事が印象的だった。
山岡編
2018年現在連載中でまだ完結していないのがこの山岡編。
山岡はファブル組織の上層部。ボスと対等に渡り合えるポジションにいる。
真黒組の砂川が山岡に依頼し、山岡の命でフリーの殺し屋の二郎が、真黒組の組長を毒殺。
その後、中国に出張に行っていたファブル組織の2名が太平市にやってくる。
この章が個人的には一番面白くて、今まで緊張と弛緩のバランスで成り立っていたザ・ファブルが、この章に突入してから終始緊張感が続いている。
理由はファブル組織の面々の驚異的な強さ。
例えば山岡自身は中年ほどの年齢だが、洋子と直接対決をしあっさりと洋子を捕縛。
ファブル組織のユーカリなども地下格闘技選手を楽々ダウンさせる。
ファブル序章から度々登場する元殺し屋・現武器商人のマツももう一人の地下格闘技選手を一瞬で殺害するなど、登場する全員が殺しのスキルに秀でている。
またこれまで語られる事の少なかったファブル組織に焦点が当てられており、佐藤洋子の生い立ちなども徐々に明らかになっている。
『ザ・ファブル』登場人物
「ザ・ファブル」組織
- 佐藤明
- 佐藤洋子
- ボス
- 山岡
- ユーカリ
- アザミ
- 二郎…組織外からの依頼で一時的に参加
真黒組
- 浜田広志
- 海老原剛士
- 小島
- 黒塩
- 高橋
有限会社オクトパス
- 田高田
- 清水岬
- 貝沼
太平興信所
- 宇津帆
- 鈴木ヒロシ
- 伊崎ツトム
- 佐羽ヒナコ
その他
- フード
『ザ・ファブル』小ネタ
『なにわ友あれ』と『ザ・ファブル』の意外な関係
これは『ザ・ファブル』だけの読者より、南勝久氏の初作『ナニワトモアレ』とその続編『なにわ友あれ』からずっと読み継いで来た人に向けた小ネタをご紹介します。
『なにわ友あれ』の最終巻31巻で、各登場人物のその後の説明がされる中、主要人物の1人、サメケンだけが最後のその後が紹介されませんでした。

『なにわ友あれ』31巻。サメケンだけ説明無し。

サメケンの登場シーン。『なにわ友あれ』12巻。腕っぷしも強く常に喧嘩っ早い。なお顔は主人公のぐっさんに似てる。
次作の『ザ・ファブル』で鮫剣(サメケン)組が回想シーンで登場したのは、サメケンの未来を示したのかもしれません。
だとするとちょっと悲しい。

『ザ・ファブル』1巻。鮫剣組が2分で全滅した事が回想される。

『ザ ファブル1巻』
『ザ・ファブル』の意味
英単語の「fable」を辞書で調べると寓話、おとぎ話と言う意味が出てきます。
叶姉妹が使う事が少し有名になった「Fabulous(ファビュラス)」の名詞形。
漫画『ザ・ファブル』内でも寓話としての意味合いが説明されています。
でも「fable」と言う単語の読み方は実は「フェイブル」です。
で、『ザ・ファブル』の作中に、P&Gの消臭剤「ファブリーズ」(をモデルにした商品)が何度も出てきます。
ファブリーズを使う事を「ファブる」と言う人もいます。
それとかけて「ファブル」=「ファブる」=「跡形もなく消す」と言う2重の意味合いを持たせている…のかも知れません。笑
完全に憶測ですが、作中のファブリーズを見てこう思った人は結構いるのではと思います。

『ザ・ファブル』2巻。「ファブル」の語源?ファブリーズっぽい商品
映画『ザ・ファブル』観賞のポイント
映画『ザ・ファブル』は2019年公開予定。
映画公式サイトはこちら。
http://the-fable-movie.jp/
原作『ザ・ファブル』の緩急をしっかり描けているか?がポイント
「緩」はゆるーいギャグシーン。
「急」は殺し屋としての裏社会が絡むバトルシーン。
何と言っても
そしてもう一つ漫画の原作の映画化でみるべきポイントは、オリジナル要素。
映画の尺上、カットせざるを得ない場面や、違う流れで進行する映画版のストーリーは、これまたもうひとつの『ザ・ファブル』として面白いものになると脚本を読んで感じております。公開は来年との事ですが、映画ファンとして僕自身も楽しみに完成を待ち望んでおります。
#ザ・ファブル— 映画『ザ・ファブル』 (@the_fable_movie) 2018年6月22日
オリジナルのストーリー、オリジナルエンディング、オリジナルの設定(キャラ同士の相関図)、オリジナルキャラ。
もう一つの『ザ・ファブル』として楽しめたらいいですね。
例えばキャストはV6の岡田准一や木村文乃と言った、ゴールデンタイムの番組の様な「万人受け」仕様。主に広く若い男女が主なターゲットの様です。
だからでしょうか、例えば原作の暴力団の真黒組が映画では「暴力組織・真黒カンパニー」に設定変更されています。暴力カンパニーとあるけどカンパニーって会社かな?
この辺はもしかしたら原作のゆるーい雰囲気を助長するのかも。
あるいは緊張感が削がれるマイナス設定となるのか…。
そして原作ではここ最近かなり重要な展開のあった真黒組の組長ですが、映画版では登場しない様です。と言う事は映画版には続編の構想が無い、もしくは続編もオリジナル設定なのかも知れません。
例えば映画版では組長が回想シーンのみで登場する様な。
映画の脚本が完成した時点で組長ってあまり目立って無かったのでそれもあるかと思いますが。
最後に、この映画『ザ・ファブル』の期待度です。
Googleトレンドでは2018年6月22日以降に大きく検索数が上昇。
これは、映画のプレスリリース解禁日がこの日で、映画公式サイトや公式Twitterなどがこの日に公開されたからなのです。
でも公式サイトや公式Twitterなどは22日以降特に情報が出ていません。
だから検索数も元に戻ってしまっています。
なんとしても公式各アカウントには期待度を上げるために動いて貰いたいものです。笑
『ザ・ファブル』漫画としての特徴
ザ・ファブルはかなり特殊な漫画と言えます。
主人公が殺し屋の男女2人。
でも主人公は殺し屋組織のボスから殺しを禁じられており、人を殺す事は一切ないと言う縛りがあり、それが単純な「激強い主人公が無双しまくる」みたいな単純なストーリーに制限をかけており、面白みが増します。
『ザ・ファブル』は数十話ずつ「◯◯編」のようにまとまったエピソードで完結する構成になっています。
裏社会の話であり人が定期的に死ぬにもかかわらず全体の雰囲気がらとても緩い。
関西出身の作者で、かつて大阪の環状族をテーマにした『ナニワトモアレ』とその続編『なにわ友あれ』と言う、コメディ×不良ものを描いていた人です。
当時から緊張と緩和の繰り返しのリズムがしっかり考えられており、
緩い関西弁の掛け合いやしょーもない下ネタなどが笑える一方、環状族同士の抗争の緊張感のバランスが良かったのです。
そのテイストはこの『ザ・ファブル』にもそのまま引き継がれています。
またこの作品を面白くしているのは作者の南氏の得意とするリアリティの追求と、引き算の技術にあります。
例えば伝説の殺し屋として見せる身体能力の高さや、
殺し屋の仕事や裏社会のトラブルなどの細かい描写など、その真偽は置いておいても「ありえそう」と思わせるギリギリのレベルのリアルさで描いていて、それが面白いのです。
一方で、南氏の作風全体で見られる「余計な情報を詰め込み過ぎない」筆致が秀逸なのです。
具体的に何かを示さず、会話や表情などで何かを暗示するだけのような表現も多く、少しだけ頭を使う構成になっています。
こう言った引き算の技術は本来とても難しいもので、情報を詰めた方が読者は理解しやすいはずなのです。
でもあまり説明過多になれば野暮になります。
説明の少ない作風である程、絵や全体の文脈などから行間を読める人こそが楽しめる、すなわち大人の読書に耐えるものです。
若い読者層は単純に無敵の殺し屋のエピソードを楽しみ、ある程度高めの年齢層の方はそう言った情報の取捨選択の妙が感じられて面白く感じる事でしょう。