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エリ シュワルツの『プロダクト レッドSEO』書評

Eli Schwartzの『プロダクトレッドSEO(原題:Product-Led SEO: The Why Behind Building Your Organic Growth Strategy)』を読んだ。

本書は、従来のSEO戦略とは一線を画し、製品やサービス自体がSEOの推進力となる戦略を提案している。単なる技術的な施策ではなく、ビジネスの根幹に組み込まれたSEOの考え方を解説しており、長期的な成長を目指すビジネスにとって重要な指針となる。

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エリーシュワルツとは何者?

Eli Schwartzは、SEOとデジタルマーケティングの分野で広く知られている専門家であり、特に「プロダクト主導型SEO(Product-Led SEO)」という概念の提唱者として著名である。彼は、10年以上にわたる経験を持ち、大規模な企業やスタートアップ向けにSEO戦略を提供してきた。彼のアプローチは、従来のSEOの技術的な最適化に依存するものではなく、製品自体がSEOの促進力となるという独自の理論に基づいている。

大手企業との取引実績多数

Schwartzは、数多くの企業と協力しており、特に成長戦略において、SEOを中心に据えたアプローチで成功を収めている。彼のクライアントには、SurveyMonkeyやQuora、Zendeskといった著名なテクノロジー企業が含まれており、大規模なデータに基づいたSEOの最適化をサポートしてきた。また、彼は講演者やコンサルタントとしても活躍しており、世界中のマーケティングカンファレンスでの講演実績がある。正直羨ましい限りだ。

さらに、Schwartzは、ForbesやTechCrunchなどの主要メディアに寄稿し、SEOやデジタルマーケティングに関する専門的な洞察を提供している。

さてそれでは本書の内容を見ていこう。

製品がSEOを促進するという新しい考え方

この本の最大の特徴は、従来のSEOの技術的な対策やキーワード最適化だけに依存せず、製品自体が自然にSEOを促進する要素となるように構築する驚愕のアプローチだ。特に、大規模なデータやリソースを持つ企業が、コンテンツやリンクの質よりもプロダクト自体の価値をSEOの中心に据えるべきだと主張している点が独特である。

ユーザーへの価値が中心となる

Schwartzはもともと「ユーザーを中心としたSEO戦略」を提唱しており、製品やサービスそのものがユーザーにとって価値がある場合、それが自然とSEO効果を生むと説く。このアプローチでは、無理に検索エンジンのアルゴリズムを操作するのではなく、ユーザーが真に求める体験や情報を提供することを優先する。これにより、エンゲージメントやシェアが自然と増え、SEO効果が高まるという理論だ。従来のSEOが技術的な最適化やキーワード密度に依存しているのに対し、プロダクトの価値とユーザー体験を最大化することが主眼である点が特徴的だ。

製品やサービスそのものを最適化せよ

『Product-Led SEO』では、「製品やサービスそのものを最適化し、ユーザーにとって欠かせない存在にすること」に関して、いくつかの具体例が挙げられています。Schwartzは、プロダクト自体がSEOの促進要素になるために、ユーザー体験や製品そのものがどのように設計されるべきかを強調しています。以下はその具体例です:

製品が提供する価値の明確化

製品がユーザーにどのような価値を提供するのかを徹底的に最適化することが必要です。例えば、ユーザーが求める機能や解決したい問題にフォーカスした製品開発を行うことで、ユーザーがその製品を使い続け、他の人にも勧めるような「欠かせない存在」になることが狙いです。

プロダクト改善サイクル

Schwartzは、プロダクトの改良を継続的に行うことが重要であると述べています。ユーザーからのフィードバックをもとに、製品の機能や使い勝手を改善し、アップデートを頻繁に行うことで、ユーザーは常に最新で最適化された体験を享受できるとしています。

例:AirbnbやAmazonのUX最適化

Schwartzは、具体的な企業名を出すことは少ないですが、AirbnbやAmazonなどの大手プラットフォームのように、ユーザー体験を最優先にした製品設計を例として挙げています。これらの企業は、ユーザーがシンプルに操作でき、欲しいものをすぐに見つけられるようなUXを提供することで、SEOにも好影響を与えています。

ユーザーが自ら製品をシェアするような仕組み

『Product-Led SEO』では、「ユーザーエクスペリエンスを強化し、彼らが積極的に製品をシェアするような仕組みを構築する」という点について、具体例が挙げられています。Eli Schwartzは、単に製品やサービスを提供するだけでなく、ユーザーがその価値を感じ、自然とシェアしたくなるような設計が重要であると強調しています。例えば、次のような手法が紹介されています:

ユーザーインターフェースの最適化

製品やサービスの使いやすさを高めることが、シェアを促進する大きな要因になる。たとえば、アプリやウェブサービスでのスムーズな操作体験や、直感的なデザインが、ユーザーにポジティブな感情を抱かせ、結果として口コミやレビューの増加に繋がる。

バイラルな機能の実装

Schwartzは、ユーザーが製品を自然にシェアできるような機能を組み込むことの重要性を示している。たとえば、紹介プログラムやインセンティブを与える仕組みを構築することで、ユーザーが製品を他者に広めたくなるように設計する。

コンテンツのパーソナライゼーション

ユーザーが自身に最適化されたコンテンツやサービスを受け取ることで、満足度が高まり、それを他人と共有する傾向が強まる。これにより、自然と製品のエンゲージメントが増し、SEO効果も向上する。

製品がなければ当然使えない

ただこのアプローチが必ずしも全ての企業に適しているわけではないと指摘することがある。特に、小規模な企業やSEOのリソースが限られているビジネスでは、この「プロダクト主導型SEO」が実行困難だと感じるかもしれない。製品自体にSEOを埋め込むアプローチは、リソースを十分に持たない企業には現実的でないという意見もあり、短期的な結果を求める人には向かない。

商品があれば凄く使える

この本は、特に大規模な企業やプロダクト主導のビジネスに役立つ。リソースが豊富で、長期的な成長を視野に入れた戦略を構築する企業にとって、Schwartzのアプローチは効果的だ。一方で、リソースが限られているスタートアップや、小規模ビジネスにとっては、他のSEO戦略に頼った方が現実的かもしれない。短期的な結果を求める場合や、限られた資金で成果を上げたい企業には、このプロダクト主導型アプローチは過度に時間やコストがかかる可能性がある。

プロダクトレッドSEOの成功と失敗

Eli Schwartzが提唱するのは、ユーザーのニーズに応じて製品やサービスが設計され、ユーザーにとって価値ある体験が自然にウェブ上でのシェアやエンゲージメントを促すこと。以下にその成功事例と失敗事例を挙げてみよう。

SaaS型タスク管理ツールの成功事例

あるSaaS型タスク管理ツールが、ユーザーの要望に応じて新機能を追加し、シンプルかつ使いやすいUIで高いユーザーエクスペリエンスを提供している。このツールは、ユーザーが仕事を効率化できるだけでなく、チーム内のコラボレーションを促進する機能を持つ。ユーザーは、自分の業務が効率化された結果、積極的にレビューを書いたり、SNSで共有するようになる。また、このツールを紹介するブログやウェビナーも増え、結果的にリンクが増加し、SEOの効果が向上する。これは、プロダクト自体がユーザーを満足させるため、自然とオーガニックなシェアやリンクが生まれるという「Product-Led SEO」の典型的な成功例である。

使い捨てプラスチック容器販売サイトの失敗事例

ある小規模なオンライン小売業者が、使い捨てプラスチック容器を販売している。この商品は、ニッチ市場向けの低価格で、特に技術革新もなく、ユーザーに特別な価値を提供するものではない。製品自体にSEOを促進する要素は含まれておらず、また、ユーザーが進んで共有したり推奨するような魅力も欠けている。このため、従来のSEO手法でキーワードを最適化し、広告を活用してトラフィックを稼ぐしかない。このケースでは、製品自体がSEOの要因となることはなく、従来の技術的SEOや広告の方が必要である。

従来のコンテンツSEOと何が違うのか

「コンテンツ重視の従来のSEO」とEli Schwartzが提唱する『Product-Led SEO』の違いは次の通り。

1. 焦点の違い

従来のSEOでは、キーワードの最適化、リンクビルディング、メタデータの最適化など、検索エンジンのアルゴリズムに合わせたコンテンツの最適化が主な焦点である。一方でProduct-Led SEOでは製品やサービス自体が検索エンジンで評価されるようにする。SEOは製品自体が自然に促進するものであり、ユーザーの体験と価値が中心。

2. アプローチの違い

従来のSEOは外部リンクやキーワード密度のような技術的最適化が重要視される。検索エンジンのルールに沿った施策が重視される。ところがProduct-Led SEOではプロダクトそのものの価値を高め、ユーザー体験を向上させることで、自然にSEO効果が得られるという発想。製品がユーザーに求められるものであれば、自然とシェアやリンクが増える。

3. コンテンツの位置づけ

従来のSEOにおいて、キーワード調査に基づいたブログ記事やページを量産するなど、コンテンツマーケティングが主軸となる。しかしProduct-Led SEOではコンテンツは補助的な役割にすぎない。製品やサービス自体が最も重要なコンテンツであり、製品が顧客のニーズに応じて自然と拡散される。

4. 短期対長期の視点

従来のSEOだと早期の結果を出すために、短期的な技術的施策に依存しがち。検索エンジンのアルゴリズム更新によって効果が左右されることも多い。Product-Led SEOの場合、長期的な成長戦略がコアとなる。製品が顧客にとって不可欠なものであれば、自然とSEOが機能するため、検索エンジンのアップデートに対しても安定的なパフォーマンスを期待できる。

5. ターゲティングの違い

従来のSEOではキーワードの最適化に重点を置き、特定の検索クエリでの上位表示を狙う。Product-Led SEOにおいては製品やサービスそのものがユーザーにとって価値のある体験を提供することにより、広範なオーディエンスをターゲットにする。

6. 主導する要素

従来のSEOは検索エンジンのアルゴリズム ドリブン(駆動)となる。特定のルールやガイドラインに従って最適化することが目的。しかしながらProduct-Led SEOでは製品そのものが主導する。検索エンジンのルールに従うのではなく、製品の品質やユーザー体験が自然に評価されるようになる。

とまあこの様な違いがある。

まとめ

『Product-Led SEO』は、これまでの技術中心のSEOとは全く異なる、新しい次元のSEO手法を提案している点で注目に値する。従来のSEOがキーワード最適化やリンクビルディングを中心にしていたのに対し、Eli Schwartzが提唱するこの戦略は、製品やサービス自体がSEOを推進する力を持つという画期的なアプローチだ。つまり、ユーザーが求める本質的な価値を提供することで、自然とトラフィックやリンクが集まり、結果的に検索エンジンでの評価が高まるという理論である。

具体的なステップとしては、まず製品やサービスそのものを最適化し、ユーザーにとって欠かせない存在にすることから始める。次に、ユーザーエクスペリエンスを強化し、彼らが積極的に製品をシェアするような仕組みを構築する。これにより、自然と被リンクが増え、エンゲージメントが高まり、SEO効果が発揮されるというものだ。コンテンツ重視の従来のSEOを超えて、プロダクトを中心に据えた戦略を組み込むことで、競争の激しい市場でも差別化が可能になる。

ただし、個人的には、もう少し具体的な成功事例、失敗事例を多数欲しかったと感じる。検索トラフィックや被リンク数、さらには売上にどのような影響を与えたかといったデータに基づいた多角的な分析があれば、より説得力が増しただろう。SEOの新しい時代を切り開く『Product-Led SEO』だが、実際の結果を裏付ける詳細な事例や統計が少ない点は惜しい。